御手紙拝見いたしました。
一、編集人の件、なるべくなら他の講座同様岩波氏にしていただいた方、万事好都合と思いますので、極力そうしてもらうよう交渉すべきだと存じます。岩波氏としては本講座は出筆者の顔ぶれから見て出版法違反にでも問われることがあってはというようなことを懸念されるのだと思いますが、そのような懸念はほとんど
二、しかし岩波氏の方でどうしても御都合が悪ければわれわれ編集者の間から誰かを選定せねばなりませんが、その場合は、貴下が最適任と存じますから、その際には是非御願い仕りたいと存じます。勿論編集者一同の決定であるならば私でも差し支えございませんが、ただ何か急に出頭して諒解を求める必要でも起こった際絶えず
三、第二巻の原稿出来ました分から順次に拝見したいと思います。一時になると中々容易でありませんから。
御蔭で私は大分元気を恢復しましたが相変わらず、午後から夜にかけて多少の微熱が出ますので仕事の能率があがらず閉口しています。当地もすでに花時を過ぎて四時変らぬ松の緑ばかりとなりましたが、それでも新緑の候は格別です。御閑暇もあらば御来遊下さい。
まずは御返事まで。
四月三十日夜
栄太郎
平野様侍史