あるところに、にはとりのたまごが 八つありました。みなさん ごぞんじの やうに、そのなかには、ひよつこが はいつてゐます。
ところが、そのなかの 一わの ひよつこが そとにでたくなつて、なかから、からを、コツツン、コツツン、コツツンと つついて、ちひさなあなを あけました。
それから、そのあなに ちひさい くちばしを つつこんで、ガリ、ガリ、ガリ、ガリと ひつかきまわしましたので、からは メリ、メリ! と われて、ひよつこの きいろいあたまが みえました。メリ、メリ、メリ、メリ

「コケツコツコ コケツコツコ コケツコツコ こつちへおいで、はやくおいで」とおかあさんの めんどりがいひました。ひよつこは とても うれしかつたので、
「ピーツク ピーツク ピー ピーツク ピーツク ピーツク ピー ピーツク はい、いますぐ、ピーツク ピー」とそばへ はしつてゆきました。
メリ、メリ、もう一つのたまごが われさうになりました。なかでは ひよつこが 一しやうけんめいに、コツツン、コツツン、コツツン、つついてゐます。
コツツン、メリメリ、コツツン メリ、コツツン、メリメリ、コツツン、メリ コツツン、メリメリ、コツツン、メリ、八つのたまごは つぎつぎに メリメリメリメリメリメリメリと われて、なかから、八つの かわいらしい ひよこがうまれました。
ひよこたちは、みんな、ちひさなあしで ピヨン ピヨン、チヨコ、チヨコと はねたり かけたり、おほさわぎ。そして、ピーツク、ピーツク、ピーツクと おかあさんの めんどりのそばへ はしつてゆきました。
「コケツコツコ、こつちですよ、コケツコツコ、こつちですよ。」と おかあさんの めんどりは ひよつこを おいしいたべもののところへ つれてゆきました。
そのうちに、八わの ひよつこたちは だんだんに おほきくなつて、きいろかつたはねは、いろんな きれいないろに かわり、あたまのうへに あかいとさかがはえて みんな 一にんまへの にはとりになりました。
ところが、そのなかの たつた一わの に
あるあさ、そのに
コケコツコー
コケコツコー
そのにコケコツコー
コケコツコー コケコツコー
コケコツコー コケコツコー
と むねをはつて、こえをはりあげて なきました。コケコツコー コケコツコー
そのこえを きいた あとの に
コケツコツコ、コケコツコ
コケツコツコ、コケコツコ
としか でません。そして、どうしても、あありつぱにコーケコツコー と なくことが できませんでした。なぜだかわかりますか みなさん? あとの にコケツコツコ、コケコツコ
めんどりたちは がつかりしてしまひました。でもけつして、がつかりしてしまふなんてことは ありません。めんどりたちは こやのなかへ はいつていつて それぞれ、きれいな おほきな たまごを うみました。そこでめんどりたちは、かういふ うたをうたひました。
「コケコケコツコ コケツコツコ
わたくしたちは うたへません
けれども、まいにち、一つづつ
きれいな たまごをうんでます。」
するとすぐに、おんどりになつた一わが うたひました。わたくしたちは うたへません
けれども、まいにち、一つづつ
きれいな たまごをうんでます。」
「コケコツコー コケコツコー
ほんとにさうです、さうですとも、
ほんとにさうです、さうです。」
そして、このうたを まいにち うたひながら、みんな、みんな、なかよく、しあわせに くらしてゐます。ほんとにさうです、さうですとも、
ほんとにさうです、さうです。」