松濤明 単独
昭和十六年八月十一日 曇時々雨
清里(七・四〇)―大門沢本流(一一・〇〇)―バットレス下(一三・二〇)―リッジ(一三・五〇~一四・〇〇)―赤岳北峰(一四・二五~一四・三〇)―清里(一六・三五)
甲府で駅弁を買いそこね、小淵沢のチャチなチラシで朝食をしたため、初めから終りまで顎を出した一日。大門沢下部では複雑な地形に手痛くほんろうされる。両俣とも被った滝に入口を
腹がへって目が廻りそうなので、赤岳へ最短コースによって登るべく、バットレス正面やや右寄りのチムニーに入ったところが、不精の天罰てき面、とたんに雨をくい、チムニー上部で苦心した。リッジは這松で、主に左側を登って北峰に達す。