冬至
櫻間中庸
あをいタイルの浴槽にひたつてゐる。
外は武藏野の風であらうにこの落ちついた心はふるさとを想つてゐる。
ぷち――ぷち
ゆぶねのあちこちに月のやうに浮んでゐる橙の實をそつと下から押へる。
兩手の指で押へると種子はあわてゝはねる。いゝ音だ。
冬至。ふるさとも風であらう。
ぷちつとはねた種子は私の額ではずんで湯に逃げた。
私は笑ひたくなつた。
顏をあげると高いガラス窓の外はもう紫のビロウドをひろげ細い月が劇のセツテングのやうにぶら下つてゐる。
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