(概念が明白となれば)

中原中也




概念が明白となれば
それの所産は観念でした

観念の恋愛とは
焼砂ですか
紙で包んで
棄てませう

馬鹿な美人
人間に倦きがなかつたら
彼岸の見えない川があつたら

反省は咏嘆を生むばかりです
自分と過去とを忘れて
他人と描ける自分との
恋をみつめて進むんだ

上手者なのに
何故結果が下手者になるのでせう
女よそれを追求して呉れ





底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩※(ローマ数字2、1-13-22)」角川書店
   2001(平成13)年4月30日初版発行
※底本のテキストは、著者自筆稿によります。
※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。
※()内の編者によるルビは省略しました。
入力:村松洋一
校正:鳩
2017年6月20日作成
2018年4月25日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について


●図書カード